『食いものや賛歌』番外編・新橋の夜 『プレ・ド・ラガール クリヨン』
いつものように東京の夜、今晩はなぜか物憂い。というか、ここ何日か失恋した後のように気分はどうも低調なのであります。最近初めて老眼鏡を買ったことも腰痛でスキーに行けないことも商売の不安も、原因はいくつか重なっているように思うのですが・・。
今日は生憎日曜日で『和作』は休み。鮨でも買ってこのままホテルに行ってしまおうかと思いながらも新橋駅地下通路をうろうろして、ふと、普段は素通りしていたレストランの《ワイン》の文字が目に入ってきました。ふいに気持ちがフィットした感じでこの店で食事をすることにします。店の名前は『プレ・ド・ラガール クリヨン』。人が忙しく行き交う地下通路沿いのあらたまって食事をするような外観ではありませんが入ってみると意外に感じがいい。カジュアルなんですが、それがちょっと静かに本を読みながら(和作だとそうはいかない)一人で食事をしてお酒を飲むのにちょうどいい感じ。カウンターに案内されると端に一人トレンチコートを着たまま英字新聞を片手にワインを飲んでいるオヤジがいる(さすがに東京、田舎にはこういうオヤジはいない)。僕はそのオヤジの反対の端に腰掛け、4種類用意された赤のグラスワインのうち奮発して(と言っても900yen)一番高い〈マルベック・オークカスク〉というアルゼンチンのワインと、ホワイトアスパラガスとエスカルゴのプロバンサル(900yen)、リヨン風ポテトのバターソテー(500yen)を注文する。「リヨン風ポテトというのはこれ?」とメニューの写真を指さすと、「そうですよ」と笑顔で答える店の女の子も感じがいい。僕は持ってきた椎名麟三の『重き流れの中に』を開く。19歳の時に読んで以来の懐かしい小説に思わずあのころの自分を感じて、物憂い気分の上にさらに感傷的な気分を重ねても、美味しい料理とワインに少しずつ暖まる体を感じながら今宵はゆったりと夕げの時が過ぎていくのでありました。ちなみに二杯目のワインは少しけちって〈ヴィション・メディタレニアン・ベルネソーヴィニヨン〉600yen。料理は他に注文しませんでしたが、エスカルゴの皿に残ったソースにバケット(250yen)を浸して食べるとこれがまた美味しかった。
今日を書いたこのレストラン、家内労働的な個人経営の店を紹介するという『食いものや賛歌』のいわば番外編ということで。
プレ・ド・ラガール クリヨン
港区新橋2 東口地下街1号(JR新橋駅直結) tel 03-6218-0118
営業時間 11:00~23:00(LO22:00)
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